クラフトファーができるまで。(5)【生地へのプリント】
しとしと、雨の日が多くなってきて梅雨真っ只中。
そんな日は「あえて」世界遺産である高野山の観光がオススメです。
雨に濡れてみずみずしく光る新緑が心地よく、心の奥深くまで癒し浄化されるような気分になれますよ。
クラフトファーができるまで。5 (後染め、柄物の場合)
今回は連載5回目。
生地へのプリント染色は、後染め、柄物の場合のみ発生する工程となります。
代表的な生地はヒョウ柄やバンビ柄などのアニマル柄ですね。
連載第1回目「原糸の染色」でお世話になった、株式会社木下染工場さんでプリントを施していただいています。
では、前回までの工程の順番を振り返ります。
1.原糸の染色
2.糸繰り(かせ繰り、コーンアップ、糸巻き)
3.丸編み工程
4.テンターと呼ばれる生地の延伸工程、糊付工程を経て毛割り・シャーリング
5.生地へのプリント(後染め、柄物の場合)
簡単にではありましたが、一つずつトピックスでご紹介させていただきました。
まだまだ奥が深いのがクラフトファー(フェイクファー、エコファー)の生地作り。もっと知ってもらって興味を持ってもらえると幸いです。
日本でも数少ない機械を使ったプリント染色
木下染工場さんでは、パイル織物に適したローラー捺染機でプリント染色をされています。
日本でも数少ないこのプリント染色の機械は約45年ほど前のもので、6色対応。
メンテナンスをできる会社も和歌山では一社のみ。
実はこの機械は元々は大阪、和泉市のマイヤー毛布用の機械でしたが毛布業界が減ってきた際にこちらに移設。
レオパード柄やヒョウ柄が得意。
ローラー捺染機で使う型押し用のロール(彫刻ロール、コッパーロール等、呼称は様々)
木下染工場さんでは約1000本、500ほどの型がずらっと並んでいて見ているだけでも楽しい。
よくあるアニマル柄以外にも「マリメッコ」のような北欧柄だったり幾何学模様まで揃っていますよ!
柄だけでなく、その時の色の調合や調整によって同じ柄でも全く違う表情になるというのも手仕事ならではの
面白いところ。
ベテラン工場長の職人技
またまた驚きの事実かも知れませんが、この数少ない機械を動かせるのは工場長ただ一人…!
機械が泉大津から来た際に、工場長も一緒に木下染工場に来られたそうです。
しかも工場長は今も岸和田から高野口まで山を越えて出勤してくれています。
職人で工場長というと何となくイメージで寡黙な強い人なのかと思ってしまいがちですが、優しい人柄で話しているとなんとなく癒される穏やかな方です。
ローラー捺染機は正直ほぼアナログと言っていい。
手で染料を機械に入れて「ハンドル」を使って圧等を調整しながら柄を合わせていきます。
そのあと色が取れないように蒸す。
一時間で約1000m、1日に1万メーターほど生地にプリント加工をすることが出来て、柄の繰り返しスピードが
早いのも特徴です。もちろん無地染め(生地染め)もできます。また、生地の種類、アクリルとレーヨンで染料自体が変わります。
機械が動いている様子は言葉を失うくらい迫力がありますよ!ほんの少しですが弊社HPのSTORYの動画で動いている様子を見ていただけます。
今と昔の高野口パイル事情
パイルの全盛期ではローラー捺染機でのプリント染色は毎日のように作業がありました。
現在では週に一回ほどだそうです。
人口も減って需要が減り、海外での製造が増える「今」。
それでも作り続けることに意味を見出したい。と高野口全体で試行錯誤をしながら「高野口パイル」という
地場産業をこの先の未来へ紡げるよう新しいことへ挑戦しています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
クラフトファー(フェイクファー、エコファー)の一つの生地ができるまでには地元の企業やたくさんの方が関わり、支えあっています。
それぞれの想いが重なり、手仕事で仕上がった生地。それを手にとっていただいた時に、ほんの少し
高野口のことを思い浮かべてもらえたら嬉しいです。
高野山の小さな小さな町で紡がれる歴史にも興味を持ってもらえたなら、観光がてら弊社のショールームにも
お立ち寄りくださいね。
何もない田舎町ですが、何だか「ほっ」とする懐かしい気持ちになれるのではないでしょうか。と思います。
高野口駅の近くには「パイル織物資料館」があるのですが、また近いうちにトピックスにてご紹介させていただきますのでお楽しみに!