ソーイングデザイナー水野佳子さんと針供養へ

エコファーで作る

 

2月8日といえば「針供養」ということで、クラフトファー(フェイクファー、エコファー)で中野メリヤスの生地を使った本を出版しているソーイングデザイナーの水野 佳子さんと東京の浅草寺淡島堂で一緒に針供養をさせていただきました。

ちなみにみなさんは針供養はご存じでしたか?

日本に古くから伝わる風習のひとつで、はじまりは平安時代にさかのぼるとも云われています。

では、針供養とは何なのか?を簡単に。

折れ曲がったり錆びてしまい使えなくなった縫い針にお世話になったことを感謝し、供養することです。

地域や社寺によって土に埋めたり、お豆腐やコンニャクに刺したりと様々です。硬い生地などを刺してきた針を最後に柔らかいものに刺すことで休んでもらうという気持ちと供物としての意味があるそうです。

 

淡嶋神社

 

そしてそして、この針供養の起源は和歌山県!

和歌山市にある淡嶋神社だというので驚きです。こちらの神社は、全国の淡嶋神社の総本社で「雛流し」の神事で有名です。

衣食住の「衣」を作るのに欠かせない「針」に感謝を込めて、モノを大切にする文化には心打たれますね。針供養は一般的には「御事始め」の日でもある2月8日ですが、12月8日の所もあるようです。

浅草寺、淡島堂の鉢供養へ

浅草寺、雷門

 

久しぶりの浅草寺。

ドキドキ、わくわくで観光客で賑わう雷門へ。早速、水野さんと合流してみると、首元にはネイビーのスヌード。

もちろん水野さんお手製のクラフトファー(フェイクファー、エコファー)で作った作品でした。普段から使っていただけて感謝です。

では、浅草寺にある淡島堂へ。

 

針供養

 

初めて見た針供養。本当に豆腐に刺している!と内心驚きつつ一緒にお参りをさせてもらいました。

豆腐に刺すのは1〜2本と決まっていて、理由は沢山刺すと他の方の場所がなくなるからと聞き納得です。

多くはないのですがチラホラ針供養される方が後を絶たない状態で、みんなが豆腐に刺すとハリネズミみたいになってしまいますね。

境内には梅の花が少し咲いていましたよ。

ソーイングデザイナー水野佳子さん

 

水野さんは文化服装学院アパレルデザイン科を卒業後、アパレル会社の企画執務の後フリーとなり「縫う」を軸に幅広い分野で活躍されています。

ソーイングファンに定評があって雑誌上のデザインや縫製だけでなく、ライブや舞台の衣装製作まで手がけています。

著者の本も沢山あり冒頭の画像「エコファーで作る」もその一冊です。

ソーイングの講師も務められており、NHKカルチャー(青山教室)手づくり専門カルチャースクールヴォーグ学園(東京校、横浜校)で縫うことの基礎から学び好きなもの作れる講座もあるので、気になる方は各HPをご覧くださいね。(東京、神奈川)

ちなみに水野さんの身につけいているバッグやジャケットもほとんどが自作。パンツに至っては全て手作りだそう!作るものは実用的なものばかりで、飾るのではなく「使いたい」使うことへの未来を設計し作られているということが伝わってきました。

特殊素材が好きで、人が断るような面倒で厄介なオファーを喜んで受けるタイプの素敵な方で「できないものはない」できるため(完成)にはどうしたらいいか考えるそうです。

この考え方が本当に素晴らしくて、それをまるで当たり前!のように軽々しく、そして力強く語ってくれるのが水野さんの魅力だな。と思いながら話を聞いていました。

浅草の老舗、神谷バーでランチ

神谷バー電気ブラン

 

浅草寺の近くにある有名店「神谷バー」でお昼から電気ブランを片手に水野さんについて更に詳しくお話しをうかがいました。

裁縫のきっかけは、水野さんの母や祖母も当たり前に身の回りにあるものを作る時代だったので特に意識せずとも縫い物をしていたので、きっかけという程でもなかったそうです。そもそも子供の頃は裁縫よりもプラモデルだったり、何になるのかわからない面白いものが好きだったと笑いながら教えてくれました。

その後、成長し水野さんのご両親も通った文化服装学院に入学。1年生の時にリアルファー(毛皮)のコートを作ったそうです。勉強として毛皮の剝ぎ方から教わるので、本物のファーを使うことに対してその頃から抵抗を感じていたと言います。

今はフェイクファー(クラフトファー、エコファー)をリアルファーのように仕上げるのが楽しみの一つと嬉しいお言葉もいただきました。

中野メリヤスと水野さんの出会い

 

水野さんはヴォーグでファーの本を出しており、和歌山が産地ということは何となく知っている状態で大阪に仕事で来たついでに、フェイクファーの産地である高野口に思いつきで電車で訪れました。

(すごい行動力ですよね!)

高野口の駅近くにある高野口パイル織物資料館へ立ち寄ってみると、なんと休館日。

立ち往生していると資料館の近くにいた女性が声をかけてくれて、隣にある紀州繊維工業協同組合へ案内してくれて、組合の西さんが案内してくれたそうです。東京からいきなり来客が来て組合の方も驚きだったようですが、水野さんも電車の本数(1時間に1本程度)に驚いたそうです。危うく東京に帰れなくなるところだったらしいです。田舎あるあるですね。

その時に水野さんは組合の西さんから東京での展示会のことを教えてもらい、来場してくれたのが中野メリヤスと水野さんとの出会いになりました。

 

 

そしてそして、またもや奇跡的な偶然により東京の展示会で高野口パイルのゾーンを見ているとヴォーグの本で水野さんが使ったファー生地を置いてあるブースを発見!それが中野メリヤスだったのです。

生地は手芸材料や生地全般を扱う「オカダヤ」さんで購入していたそうです。

展示会でのお話も盛り上がり、クラフトファー生地(フェイクファー、エコファー)の作る工程を見に来ませんか?とお誘いし、その年の冬に高野口に来てくれました。

糸の染色から見学し分業について説明させていただくと、水野さんは「こんなに多くの人が関わって出来上がった生地を無駄にしたくない」と言ってくれたのは心に沁みました。

 

 

例えハギレでも、同じ生地に変わりない。ということで、いかに捨てずに使うか。を切に考えてくれて、ファー生地を裁断した際に出る毛足を使いクッションの綿にしてみたり色々と試してみたそうです。

水野さんの本でも、余ってしまう生地を無駄にしないようハギレを組み合わせたサッカーボールの作り方を載せてくれています。ファー生地でなくても、どんな生地でもハギレが出るので無駄にしないように色んな生地でサッカーボールができるのも面白そうですね。

実は中野メリヤスにあるボールは全て水野さん作。東京の展示会に来てくれる度に置いていってくれています。

ショールームに飾っているのですが、来る方のほとんどが手に取って欲しがるくらいとても好評。

過去には高野口でファー限定のワークショップも開催。大阪や東京から人数を集めて工場見学をしてもらって、ただ作るだけではなく学びのあるワークショップは好評でした。

 

 

クラフトファー(フェイクファー、エコファー)を使ったハンドメイドで水野さんのオススメを聞いてみると「ハンドバッグ」と教えてくれましたが「正直なところ縫い目が見えないのでファー生地は他の素材よりも楽なので、なんでも気にせず作ってみたいものに挑戦してみるのが楽しいですよ!」という答えでした。

強いて言うなら裁断に気を付けて、縫い代1センチくらいは必要ということと毛足のケバケバをマメに取ること。

確かに。案外使いやすい生地なのかも?

生地を購入した方からも「手に取るまでは大変そうだな。とファー生地を遠ざけていましたが、実際に使ってみると他の生地だとキッチリしないと見えてしまうところが毛足で見えないので、少しズボラでも大丈夫なファー生地にハマりました。」というお声をいただいていたので納得です。

ローヤル珈琲店で語り合う

ローヤル珈琲店

 

話が盛り上がりすぎ二軒目には水野さんオススメの喫茶店へ。

ローヤル珈琲店は1962年創業のレトロクラシカルな純喫茶。有名なのはホットサンドらしいのですが、さすがに食べすぎになるので「鎌倉山チーズケーキ」を注文。低温でじっくり焼き上げられておりベイクドとレアの間のような食感で美味しい。

そんなこんなで夕方までいろんなお話をさせていただきました。

ファー生地から偶然にも繋がったご縁に感謝です。

水野さんは「人が思い描いているものに対してカタチにするのが楽しい。」と素敵な表情で話してくれて、自分たちは人が思い描いたモノがカタチになる時に「使いたい生地」に選ばれるようになりたいと思いました。

逆にクラフトファー生地を手にとって「何を作ろうかな?」というワクワク感から生み出される作品というのも見てみたい。とも思ったり。

最近はInstagramでFUR MARKET(中野メリヤス)の生地で作られた作品を募集しています。 ⁡

#furmarketworks と入れてインスタグラムに投稿してみてくださいね!

という事で楽しすぎたので長文となってしまいましたが、水野さん、この度は急なお願いにも関わらず針供養にご同行させてもらいありがとうございました。そして、最後まで読んでいただいた皆様ありがとうございます。